九変篇のポイント解説
[3つのポイント]
・やってはいけない事があることを理解せよ |
・「利」だけでなく「害」も考慮せよ |
・戦場での9つの変化が重要 |
[サマリ]
戦場で取るべき九つの変化について説明しています。戦場で敵に主導権を握られないためには、自軍の意図を敵につかませないことが重要になってくるが、虚実篇第六で触れられた「無形」を実現するためにも戦場での基本的事項をおさえ、それを応用することの重要といっています。
読み下し文・現代語訳
読み下し文 | 現代語訳 |
孫子曰く、およそ兵を用うるの法は、将、命を君に受け、軍を合し衆を聚め、圮地には舍ることなく、衢地には交わり合し、絶地には留まることなく、囲地にはすなわち謀り、死地にはすなわち戦う。塗に由らざる所あり。軍に撃たざる所あり。城に攻めざる所あり。地に争わざる所あり。君命に受けざる所あり。 | 孫子はいう。戦争の原則は、高い丘にいる敵は攻めてはならず、丘を背にしてせめてくる敵に迎え撃ってはならず、険しい地勢にいる敵には長く対してはならず、偽りに誘いの退却はは追いかけてはならず、包囲した敵軍には逃げ道は逃げ道をあけておき、進退窮まったてきを追い詰めてはいけない。道路は通ってはならない道もある。敵軍は撃ってはならない敵軍もある。君命は受けてはならない君命もある。 |
ゆえに将、九変の利に通ずれば、兵を用うることを知る。将、九変の利に通ぜざれば、地形を知るといえども、地の利を得ることあたわず。兵を治めて九変の術を知らざれば、五利を知るといえども、人の用を得ることあたわず。
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九変(常道とは違う九の処置)の利益によく精通した将軍こそ、軍の用い方をりかいしているといえる。軍を統率しながら九変を知らないのはたとえ虚実篇5つの処置をしっていても 兵士を十分に働かせることはできない。 |
このゆえに智者の慮は必ず利害に雑う。利に雑えて務め信ぶべきなり。害に雑えて患い解くべきなり。このゆえに諸侯を屈するものは害をもってし、諸侯を役するものは業をもってし、諸侯を趨らすものは利をもってす。
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というわけで智者は一つのことを考えるのに利と害を交えて考える。
外国の諸侯を屈服させるにはその害になることばかりを強調し、外国の諸侯を使役するにはみりゃく的な事業をしむけ外国の諸侯を奔走させるにはその利益ばかりを強調する。 |
ゆえに兵を用うるの法は、その来たらざるを恃むなく、われのもって待つあるを恃むなり。その攻めざるを恃むなく、われの攻むべからざるところあるを恃むなり。
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戦争の原則は、敵のやってこないことを頼りとするのではなく、いつやっても来てもよいような備えがこちらにあることを頼みとする。 |
ゆえに将に五危あり。必死は殺さるべきなり、必生は虜にさるべきなり、忿速は侮らるべきなり、廉潔は辱めらるべきなり、愛民は煩わさるべきなり。およそこの五者は将の過ちなり、兵を用うるの災いなり。軍を覆し将を殺すは必ず五危をもってす。察せざるべからざるなり。
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そこで将軍は五つの危険がある。決死の覚悟でいるのは殺される、生きることばかりを考えては捕虜にされ、気短かは侮られ計略におち、利欲がなく清廉なのは辱められ計略におち、兵士を愛するのは兵士の世話で苦労。軍隊を滅亡させるのは必ずのこ5つのきけんのどれかであるので、注意する。 |